映画「熊もつれ」の原案者は、主演俳優でもある大城規彦です。この物語の種がまかれたのは、実は2013年。場所はニューヨークでした。今回は、彼から聞いた原案誕生の経緯を紹介します。
きっかけは仲間との雑談
当時ニューヨークで俳優として活動していた大城は、一時帰国の折に、フィルムメーカー仲間との何気ない会話の中にいました。仲間の一人が北海道・下川町に関わる仕事をしていたことから話題は自然と熊のことになり、やがて三毛別の獣害事件の話へ。その流れで大城はこう口にしたそうです。
「そんな話を映画にするなら、俺は熊の着ぐるみを着て熊役をやりたい」
本人いわく、そのときは本当にそれだけの、たわいもない一言だったそうです。
10年越しに浮かび上がった「熊の着ぐるみの男」
時が経ち、日本に帰国した大城は、自身が主催する演技ワークショップのためにエチュード(即興劇)のお題を考えていました。そのとき、あの「熊の着ぐるみを着た男」がふいに浮かび上がってきたといいます。気づけばお題のつもりが一つの物語になってしまい、「これをどうにかして映画にしたい」と心に火がついてしまいました。
ところが、誰に見せても鼻で笑われる程度で、まともに取り合ってくれる人はいなかったそうです。
唯一、食いついた変な監督
そんな空回りの日々の中、友人の紹介で大城が出会ったのが、私、テッド・シャークスでした。Ted Sharksという名前なのに純日本人である私に、彼は当初疑問を抱いたそうですが、私は唯一、その着ぐるみのアイデアに興味津々で話を聞いた人間でした。その場で彼は「一緒にこの映画を作ってくれませんか」と頼み、私は「いいですよ」と答えました。
2013年の雑談から10年。2023年1月、映画「熊もつれ」はこうして動き出しました。物語の種は、どこに転がっているか分からないものです。