映画「熊もつれ」の脚本は、3人で書きました。監督の私(テッド・シャークス)、原案者で主演の大城規彦、そして小説家でもあり本作にも出演している奥山瞬間(おくやま・せつな)。2023年3月から2025年8月まで、およそ2年半かけての共同執筆でした。

「3人なら3倍速い」という誤算

始める前は、単純にこう考えていました。3人でやれば3倍のアイデアが出て、3倍早く書ける、と。

結果は逆でした。3人がそれぞれ別のアイデアを持っているから、まとまらないのです。毎週欠かさず数時間の議論を重ね、ときには合宿までして本気の議論をぶつけ合いました。3人とも頭が真っ白になり、何のアイデアも出てこないまま6時間ただ煮詰まった夜も、一度や二度ではありません。

第一稿と第二稿は「別の映画」だった

そうして書き上げた第一稿と第二稿は、業界のプロの方々から門前払いをくらいました。落ち込みました。ちなみにこの第一稿・第二稿は、熊の着ぐるみが出てくること以外、現在の完成版とはまったく異なる物語でした。それくらい、根本から書き直したということです。

浴びるように映画を観て、書籍を読み、励まし合いながら書き続け、2年半以上を経てたどり着いた第三稿が、現在の「熊もつれ」の基盤になりました。ブラックだけれどコメディーの色もあり、ミステリーの要素も大きい。一見難しそうな「人と自然」「赦し」というテーマを、エンタメとして成立させることにこだわり抜いた脚本です。

3人で書いたからできたこと

3人での執筆は効率が悪い。それは間違いありません。ただ、本気でぶつかり合った3人分の視点が入ったことで、一人では絶対に書けなかった多重で重厚な物語になったと考えています。その本気度が登場人物たちに乗り移ったような、なかなか珍しい映画になりました。

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